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アメリカの製造業はV字回復が始まるのか?

Federal Reserve

5月のFRBによるインフレ調整後の米製造業生産の数字が発表されました。発表された数値を見ると、製造業は急速に回復しています。目を引いたのは、主要な結果が労働省の5月の雇用統計とよく似ていることです。製造業の生産高が回復するといった驚きは雇用統計を見れば推測できなかったわけではありません。工場は、ロックダウン中に再開したり、生産を拡大したということはありません。その製造業の回復について、詳細な数値とともに何を意味しているのか考察したいと思います。

製造業生産高の5月の数値と雇用統計の5月の数値

月次ベースの数字で、コロナウィルスの影響が当分の間ピークを迎え、4月の民間部門の雇用は15.37%減、製造業は10.34%減となりました。その月の実質製造業生産高は、前月比で15.66%も急落しています。

経済の再開が加速し出した5月の数字を見てみます。民間部門の雇用者数は2.86%増、製造業の純雇用は1.96%増、製造業生産は3.83%増となりました。ウィルスによるシャットダウンの最悪の状態から今のところ、かなり早く立ち直っている経済のように見えますが、通常の状態に戻るまでにはまだまだ時間がかかります。ここはV字回復の可能性があると言う事だけが言えます。

製造業生産高の回復の要因

最新のFRBの製造業レポートについて、はっきりとわかることがあります。製造業生産高の回復は自動車産業の生産量レベルに牽引されています。実際、先月の速報値では文字通り崩壊していた自動車や軽トラックの生産が、4月には限りなくゼロに近い状態にまで修正されています。

 

耐久財の生産高推移

それらの結果を詳しく見る前に少し過去の数値を振り返ります。5月のインフレ後の月次製造業生産高の増加は、過去最大となりました。しかし、4月の連続急落は13.28%から修正されたため、以前考えられていたよりもさらに記録的なものとなっています。そして3月の下げ幅が5.53%から5.27%に縮小したのはわずかな慰めでしかありません。少なくとも、5月の時点で、アメリカの工場の月次実質生産高は2009年7月の大不況以来の低水準となっています。

ほとんどの動きは耐久財に集中しており、3月、特に4月に製造業を引き下げ、そして5月には製造業を上昇に導いたのも耐久財です。産業全体と同様に、3月の耐久財生産の月次の落ち込みは以前の予想よりも小さく(8.23%ではなく7.73%)、4月の被害は当初の数値よりも大きく(19.27%ではなく21.64%の落ち込み)なっています。5月のスーパーセクターの実質生産高は前月比で5.83%増加したが、それでも生産高の水準は2009年11月以来の低水準にとどまっており、大不況の月であったと言えます。

また、自動車産業が耐久財生産の変動の主要因となっています。3月と4月の車両と部品を合わせた改定値は、いずれも前回よりやや悪い(前者は30.03%対29.96%、後者は76.47%対71.69%)となっています。5月のFRBの製造業レポートでは、非耐久財の3月の生産高の落ち込みが2.64%と比較的穏やかでしたが、4月の減少は8.23%よりも悪い9.59%との予想でした。

非耐久財の生産高推移

非耐久性の工場生産は、5月に2.07パーセントで上昇しましたが、興味深いことに、この上昇は2017年10月のに記録した2.28パーセントに次ぐ最大の上昇でした。2017年10月は 石油精製所や石油化学を使用する産業の多くがメキシコ湾の大きなハリケーンの後にライン上に戻ってきたときです。

最後に、航空機や航空機部品の分野では、本当に不可解な結果になっています。
これらは、コロナウィルスの数か月前からボーイングの安全性の問題で悩まされていました。
先月のFRBの製造業レポートでは、これらの産業の3月のインフレ調整後の落ち込みが12.09%と報告されていたのに対し、今回の数値ではわずか5.38%と報告されています。

さらに4月の続落率は28.88%ではなく28.31%とやや小さいと判断されました。そして、5月の月次回復率は9.43%と堅調に推移すると予想されています。

まとめ

このコロナ禍の春の製造業の低迷と反発の動きは、雇用市場の動きと酷似しています。そしてその反発の動きについては疑問が残ります。 V字回復は続くのか? それともに、単に株式市場のデッドキャットバウンス(マーケットが大きく下げた後の一時的に起こる反発)の実体経済版を見ているだけなのだろうか?

その判断はFRBより発表されるデータを注視していく必要があります。

Written by 日比 章善

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