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時代はクラウドなんですよ

先日ネットを賑わせた、国会での「時代はクラウドなんですよ」発言。
「クラウドだってサーバーだ」
「国会議員はIT音痴だ」
こういった意見がネットで飛び交っていましたが、それは置いておいて「時代はクラウド」という点に着目していきたいと思います。

もちろん、「時代はクラウド」という言葉は間違っていないと思っています。
AmazonのAWS(Amazon Web Service)や、MicrosoftのAzure、GoogleのGCP(Google Cloud Platform)を筆頭として多くの企業がクラウドインフラサービスを提供しており、さらに多くの企業がそのサービスを利用しています。

この記事では、クラウドサービスを利用したことのない読者の方へ向けた簡単なクラウドの説明と、導入のメリット・デメリットをお伝えできればと思います。

そもそもクラウドとは?他にはどんなものがあるの?

そもそもクラウドとは何を意味しているのでしょうか。

クラウド(クラウド・コンピューティング)は、コンピューターの利用形態のひとつです。
インターネットなどのネットワークに接続されたコンピューター(サーバー)が提供するサービスを、利用者はネットワーク経由で手元のパソコンやスマートフォンで使います。
クラウドの特長のひとつは、利用にあたって、コンピューター(サーバー)の所在地(どこ?)が意識されない点です。
たとえるならば、雲(クラウド)の中にあるコンピューターを地上から利用しているようなイメージです。
そして、クラウドの形態で提供されるサービスを「クラウドサービス」と言います。

引用:クラウドサービスとは?例を交えて解説!初心者にも分かるクラウド入門 (第1回 そうか!わかった。クラウドサービス)

ここで「コンピューターの利用形態のひとつです」とありますが、クラウド以外の利用形態も挙げていきたいと思います。

  • オンプレミス
    自社でサーバー・システムを保有する形態です。
  • レンタルサーバー
    1台のサーバーを、複数のユーザーで共有して使用する形態です。
  • VPS(仮想専用サーバー)
    1台のサーバーを複数人で共有する点は共用サーバーと変わりません。
    ただし、「仮想化」という技術を利用し、1台のサーバーの中で契約者ごとに領域が区切られています。

大きく分類すると、こんなところでしょうか。
本当は他にも種類はありますし、ハイブリッドクラウドといった形態もありますが、話がややこしくなってしまうのでここでは触れないでおきます。

どれを利用すればいいの?

…わかりません。

えーっ、と思われるかとも思いますが、本当にわからないのです。
各利用形態について、メリット・デメリットがあるため、背景・目的によって、どの利用形態を使用すべきかは変わってきます。
ここでは、いくつかの項目をあげ、それぞれの形態を比較していきます。

※もちろん、一言に「クラウド」「VPS」といっても、提供する企業やサービスの内容による違いは少なからずあります。
あくまで、各利用形態の大雑把なイメージとして捉えてください。

  • 費用
    (安い)レンタルサーバー < VPS <<< オンプレミス (高い)
    ※クラウドは、要件に応じて変わるため、比較が困難費用については、「高い方が嬉しい!」という方はまずいないと思っています(いたらすみません)。まずオンプレミスについては、サーバーそのものを購入する必要があるだけでなく、サーバーを設置する環境の準備にも費用がかかりますし、その環境を維持するのにも費用がかかります。
    自社でデータセンターを持てるような大企業であれば良いですが、そう簡単に手を出せるようなものではないと思います。

    レンタルサーバーは非常にお手頃価格ですが、その反面、色々な制約(後述)があります。

    VPSは、レンタルサーバーと比較すると少し高くなりますが、それでもオンプレミスと比較するとかなり安く済む印象です。

    クラウドについては、利用するサーバーの性能や利用する時間によって、大きく変わってきます。

  • 導入期間
    (短い)レンタルサーバー ≒ VPS ≒ クラウド <<< オンプレミス (長い)導入期間についても、「長い方が良いんだ!」という方はいないですよね。基本的に、レンタルサーバー・VPS・クラウドは、即日で利用できる場合がほとんどかと思います。

    それに対してオンプレミスについては、ハードウェアの調達や環境のカスタマイズなど、数か月単位の導入期間が必要となります。
    もちろん、企業によって違いはあるのだろうと思いますが、私が過去に携わった現場ではやはり数か月の導入期間がありました。
    ※その分、私のいたチームはスケジュールに余裕ができたわけで、そういった意味では「長い方が良いんだ!」だったのかもしれない…

  • 自由度
    (低い)レンタルサーバー <<< VPS < クラウド = オンプレミス (高い)自由度が高いと、それだけ要件に応じたカスタマイズが可能となります。
    またセキュリティの面でも、自由度が高ければ高いほど、強固なものにすることができます。まずレンタルサーバーについては、一台のサーバーを他のユーザーと共有するため、サーバーの設定そのものについても変更することはできません。
    また、利用できるソフトウェアについても、制限があります。

    VPSは、上述の仮想化技術を使用しているため、あたかも各ユーザーで別のサーバーを使用しているかのように利用することができます。
    従ってサーバーの設定を変更することはできますが、基本的にネットワーク構成についてはカスタマイズできない場合が多いかと思います。

    クラウド・オンプレミスについては、サーバーの設定はもちろん、ネットワーク構成についても、ユーザーの好きなようにカスタマイズすることができます。

    ただ「自由度」は、単純に高ければ良いかというと、一概にそうとは言えないと思っています。
    というのも、「自由度が高い」=「専門的な知識が必要」になるからです。
    サーバーやネットワークに関する知識を持つ人間が社内にいれば(もしくはベンダーを雇うことができれば)自由度の高さはメリットになります。

  • 障害時の対応範囲
    (少ない)レンタルサーバー < VPS < クラウド < オンプレミス (多い)どんなに準備をしていても、障害は発生してしまうものです。
    私の数年の経験だけでも、「数時間たっても処理が終わらない」「突然ネットワークがつながらなくなる」「CPU使用率が激増する」などなど…そんな思い出すだけで寒気のする障害対応経験はさておき、利用形態に応じて、ユーザーが対応しなくてはいけない範囲が変わってきます。

    まずオンプレミスについてですが、説明するまでもなく、どこでどんな障害が発生しようとも、誰も何もしてくれません。

    その他の形態については、
    クラウドならハイパーバイザー(クラウドサービスを提供するためのプログラムだと思ってください)
    VPSならOSまで
    レンタルサーバーならアプリケーション以外のすべて
    といった風に、基本的にはサービスを提供するために必要な範囲までなら提供業者が対応してくれます。

    ここもまた、自由度の高さがそのまま裏目に出ると思っていただいて構いません。

  • スケールに関する柔軟さ
    (低い)レンタルサーバー = オンプレミス < VPS <<< クラウド (高い)システムの処理能力を高めるために、サーバーの台数を増やすことを「スケールアウト」、サーバーの性能を上げることを「スケールアップ」といいます。
    社内システムなどであれば、いきなり高負荷がかかるというシチュエーションはあまりないかもしれませんが、
    ECサイトやWebサービスであれば、突然に高負荷がかかることは多々あります。レンタルサーバーとオンプレミスについては、そういった場合に「スケールアウト」「スケールアップ」をすることはできません。
    もちろん、オンプレミスであれば、時間と費用をかければ可能でしょうが、突然必要になった場合に対応することは不可能です。

    VPSについては、「スケールアウト」「スケールアップ」に対応しているサービスもあるようです。

    クラウドについては、この柔軟さが大きなメリットとなります。
    もちろん増やすだけでなく、負荷が低い時間帯はサーバーの台数を減らす、といった要件に対しても柔軟に対応することができます。

結論

…という風に、ここまで挙げた項目だけでも、各利用形態においてメリット・デメリットがばらけています。
さらに細かく見ていけば他にも項目はたくさんありますし、当然、提供業者によって多種多様なサービスがあれば、各サービス固有のメリット・デメリットもあるでしょう。

冒頭の話に戻りますが、私はやはり「時代はクラウド」という言葉は間違っていないと思っています。
というのも、すぐに使えて、自由で、柔軟で…と、メリット・デメリットのバランスが優れているからです。

では「『時代はクラウド』なら、システムは何でもかんでもクラウドに乗せるべきなのか?」というと、それはそれで違うと思っています。
構築しようとしているシステムがどんなもので、どんなシチュエーションが起こり得て、その際にどのような挙動をしてほしいか、自社ではどこまで対応が可能か、そもそも費用はどこまで出せるのか…
などといった要件をしっかりと吟味した上で、最適なサービスを利用するのがベストだと思います。

ちなみに

「時代はクラウド」発言の国会での答弁、これはマイナンバー関連システムに関するものですね。
あくまで個人的な意見ですがマイナンバー関連システムはクラウドには乗せないで欲しいと思います。

というのも、このシステムはマイナンバーという重要情報中の重要情報を扱うものですよね。
さすがにそのレベルのシステムは、企業の提供するクラウドサービスの上に乗せずに、国が所有するデータセンターで、然るべきセキュリティ環境・運用方針のもと、運用していくべきだと思います。
よって、このケースでは「オンプレミス」がベストソリューション!!…という主張で締めさせて頂きます。

Written by Masahide Yasui

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