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中小製造業は、ゼブラ企業になれるか

ゼブラ企業という言葉を聞いたことはありますか?近年世界で注目されてきた企業の概念で、世界を席巻しているユニコーン企業と対局のものです。

今、多くの企業が今後について不安に思っていると思います。しかし経営理念はブレないようにしたいですよね。日本の中小製造業でも、世界でも注目されるレベルの概念を持った企業として、胸を張って地道に世の中のために活動して利益を上げる企業になればいいのです。そういったあり方がゼブラ企業と通じる考え方だと思うので、考え方をご紹介したいと思います。

引き続き世界で大注目され続けているユニコーン企業

ユニコーン企業」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。アメリカのベンチャーキャピタリストが提唱した概念で、評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業のことを言います。非常にレアで夢や空想の世界のような10億ドルという評価額を、空想上の生き物である一角獣のユニコーンに例えたそうです。

かつてのFacebookやTwitter、最近ではUberやWework、Airbnbがユニコーン企業に該当します。

なお、ユニコーン企業の条件は以下の4つです。

1.創業10年以内
2.評価額10億ドル以上
3.非上場
4.テクノロジー企業(この条件は絶対ではない)

10年以内に評価額10億ドルということは、一気に拡大して世界を席巻するような企業なんです。アメリカのベンチャーの多くはこういった規模や成長を目指し、投資家は期待を込めてベンチャー企業へ投資します。

こういったユニコーンを求める動きは続くと思われます。中国やこれから発展する国では、国の産業を変えるぐらいの企業が出てきて、それらが世界に羽ばたくとユニコーンになります。

世界のユニコーン企業はアメリカと中国で8割を占めると言われています。日本では、例えば上場前のメルカリがユニコーン企業でしたが、日本にはユニコーンは非常に少なく育ちにくいです。これは大問題だと思いますが、他でも色々問題視されて論じられていますし、今回はゼブラ企業についての話なので、ユニコーンについての話はここまでにします。

ゼブラ企業という概念の登場

ゼブラ企業とは、自社の成長だけでなく、社会貢献も踏まえた持続的な成長を重視する企業のことです。利潤を追求しながらも社会や他社との共存を求める姿勢が、白と黒の対局の模様を持つゼブラ(シマウマ)に例えられました。現実の動物であることも、空想とは違って地に足着いたことを指していると言われています。

このゼブラ企業という概念の登場の背景を一言で言うと、ユニコーン企業へのアンチテーゼです。

最近のユニコーン企業は何かおかしいと思われています。Uberは赤字、Weworkはゴタゴタして上場申請を撤回、TikTokを巡る米中のゴタゴタなど、イメージが悪くなっています。TikTokは本質的な問題とは少し違いますが、イメージダウンには貢献してしまってます。さらにその背景には、ソーシャルビジネスが重要視されてきこと、金持ちの狂騒への抵抗感が出てきたことがあると思われます。

要するに、行き過ぎに対する揺り戻しですね。いいことをやっていて必要な企業で、成長している企業はいっぱいあります。そういった企業も重要だと認識されてきたのはいいことだと思います。

ゼブラ企業の代表格と言われているのが、靴のオンラインストアのZappos, 手作りマーケットプレイスのEtsy, D2CブランドのWerby Parker, Allbirds, クラウドファンディングのIndiegogoなどです。

Zapposについては、こちらの記事に詳しく書かれていますし、本が出ているので読んでいただければと思います。

Zapposのように「企業文化=競争優位」と位置づけ、顧客と社員と社会から愛される企業を真面目に目指すと時間がかかります。人材育成や教育に時間がかかりますし、顧客サービスを丁寧にしているとオペレーション効率は落ちます。成長スピードを考えると10年以内に評価額10億ドル以上なんてかなり難しいです。しかし彼らは尊敬される企業となりました。アメリカらしいのが、なんとZapposはAmazonに買収されました。これからZapposがどうなるか、注目しています。

また、代表的なゼブラ企業でも経営理念を継続することは難しく、Etsyは変わってきています。元々手作り作品のマーケットプレイスでコアなユーザーに支持されていましたが、「ある母親が年間100万ドル以上売り上げた」というサクセスストーリーが出てきて性質が変わりました。手作りで100万ドルって、不可能なレベルですよね。サクセスストーリーを目指して高い売上を求める人が増え、転売ヤーも増え、当初の理念とは違った方向で成長しています。そのため、創業当時のメンバーが続々と離れた上でIPOをしようとしているのです。ユーザーには手作り作品を展示するオンライン会場がEtsyしかなく、もう好きではないけど使っているユーザーが多くなったようですが、成長は続いています。こちらも今後どうなるか注目しています。

日本はゼブラ企業の宝庫では

先ほど「ゼブラ企業とは、自社の成長だけでなく、社会貢献も踏まえた持続的な成長を重視する企業」と書きました。これは日本に合う概念だと思いませんか。

代表的な企業が、例えば伊那食品工業です。伊那食品工業は寒天の世界シェア15%の企業で、働く社員の幸せを一番に考え、2008年には48期連続増収増益を達成した企業です。48期連続ってすごいですよね。木の年輪のように少しずつ成長する「年輪経営」を掲げています。超有名な企業なので、ご存じない方は調べてみてください。

長寿企業が多いのは日本の特徴です。長寿になるためには、様々な苦難があるはずで、それを乗り越えるには顧客や社員や社会からの信頼がないと誰も助けてくれないでしょう。顧客・社員・社会に愛される会社が多い結果が長寿につながっているのだと思います。

先ほどのZapposやEtsyはこれから次第ではありますが、恐らく様相は変わると思います。それがいいか悪いかというより、経営理念を貫いて生き抜くことが得意な日本企業は多い(仮説)、というポイントを認識していただきたいと思います。

日本の製造業はゼブラ企業を目指すべきか

最後に、誤解がないように私の考えをまとめてお伝えします。

私は中小製造業はベンチャー企業であるべきと考えます。つまり、改めて創業に立ち返り、これからちゃんと成長し、補助金頼みではなく自立した経営をすべきと考えています。

その成長の方向性は、今の経営理念によって決めるべきですし、不明確な経営理念の企業はこれから経営理念を再構築して方向性を決めるべきと考えます。それが世の中を変えるような理念なら、テクノロジーやビジネスモデルを基軸にユニコーンのような企業を目指すべきで、私はそういった企業が出てくることを期待しています。一方で地道に世の中に貢献して成長を続ける経営理念であれば、胸を張ってゼブラ企業を目指すべきです。

ゼブラ企業であっても、これからは海外展開は必要ですし、資金調達を融資だけではなく投資を選択肢に入れることも重要です。手段の表面だけを見ると一見ユニコーンと変わらないこともありますが、ブレないのが経営理念と成長の方向性です。周辺との協力しながら世の中に貢献し、地に足着いた成長をすることです。

経営理念が不明確で、これまで何となく生き残っている中小製造業はこれから厳しくなると考えます。コロナ禍で変化のスピードが上がったからで、軸がないと変化に対応するのではなく流されて消えるからです。

経営者の方は、経営理念をブレずに世の中の状況に合わせることを、改めて考えてみてはいかがでしょうか。

Written by 辰巳 竜一

中小製造業を応援しています! 辰巳工業株式会社元取締役、中小製造業向け経営コンサルタント(株式会社ヴィサイプ代表取締役)。家業の鋳物工場の成長させた実績から、現在は中小企業のブランディング(国内および海外)や事業戦略から現場改善への一連の統合した活動を支援。

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